僕の世界で/あさみ
御覧、あなたのいる世界はこんなにも眩いのだよ。
そう笑って君が僕の手を両手で包み込んだ。
ぽた、
繋がった手から泥が滴る
君は 泥のついてしまった指で 僕の傷をなぞった
痛みを知りなさい 寒さを知りなさい
傷を知りなさい 自分の汚れた手を世界の光に透かしなさい
ぽた、
暖かく輝く 君の世界に 凍えた足を踏み出した
美しく輝く 君のいる世界に 汚れた頬をさらけ出した
ぽたり、
熱い 痛い そして自分は汚れている
そんな僕の手を包む君の手は しかし矢張り美しかった
泥は落ちないだろう 傷は消えないだろう
光に晒され僕はそれを忘れないだろう
ぽた、ぽた、
ぽた、ぽた、
ああ マリア マリア
わかったのです なにもかも
ようやく僕は 生きることができた。
マリア もしも
もしもこの綺麗なひとが 何かに怯え 凍え 傷つくことがあったなら
僕は迷わず手を差し伸べましょう。
生きてください やさしいひとよ。生きてください あなたも。
あなたのいる僕の世界はこんなにも暖かく、美しく、眩いのだから。
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