六地蔵/服部 剛
身に覚えのないことで
なぜか矛先(ほこさき)はこちらに向いて
誰かの荷物を背負う夜
自らの影を路面に引きずりながら
へなへなと歩いていると
影に一つの石ころが浮かぶ
理不尽な誰かの足に蹴飛ばされるほどに
じっと 口を結び 固まってゆく石ころ
降り始めた雨の中を歩き続けていると
道の傍らに並ぶ六人のお地蔵様は
小屋の屋根の下で雨宿り
屋根を打つ雨唄を
瞳を閉じて聞いている
首の下にかけた赤い布をそっとめくると
石ころが胸に埋められており
六つの小さい御霊(みたま)は横一列に並んでいる
暗い小屋の中で
雨唄(あまうた)と風の音(ね)が強まるほどに
六つの石ころは赤い布を透(す)けて
朧(おぼろ)な光を増してゆく
六人のお地蔵様と向き合い
胸に手をあてていると
からだじゅうに満ちてゆく
石ころの光
夜道の向こうから
ライトで闇を照らす
無人のバスが近づいて来る
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