あとがき/よねたみつひろ
 
 「捧げる詩集」(1995年・緑鯨社)には、1988年から1990年にわたって個人誌「風羅坊」に発表した作品を収めた。個人誌といっても、B4用紙に短い詩を毎号6〜8篇コピーして読んでほしい人に見境もなく送るのである(笑)。コンセプトは、「短く、平明で、身辺的」であること。そこにはそれ以前に親しんできた「現代詩」的な構文への反発があったが、書いているうちにそんなことはどうでもよくなった。私は昭和から平成に移行する時代とともに歩みながら、妻のことや子の誕生を避けられず謳った。その意味でこの詩集は、私にとって(おそらく私にとってだけ)かつて詩と世界がシンクロしたことを思いださせてくれる幸福な一冊といえる
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