シリウスの光る夜/服部 剛
 
夜道を散歩しながら
人知れぬ夢を呟くと 
胸に溢れる想いは
目の前の坂道を昇り 
仰いだ頭上には 
只 白い月が
雲間から地上の私を見ていた 

半年前 
オートバイに乗ったお爺さんが転倒し 
息絶えた歩道に闇の穴が開いていた 

誰もが通り過ぎる日常の身近な場所に潜む
未知への通路

夜道を歩き続けると
ふと見下ろした足元に捨てられた煙草の空箱 
「HOPE」の文字が夜風に吹かれて
路面にからからと音をたてる 

やがて見えてきた教会の門に近づくと 
「止まれ」の路面標識の先に
揃えた白い足跡と爪先に引かれた白線があり

足跡の上にはある人影が立ち
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