真昼の入浴 〜デクノボウの休日〜/服部 剛
 

√(ルート) の形となる時 
一月(ひとつき)前に見た映画館のスクリーンの中で 
呆(ほう)けていた数学博士が 
閉じた私の瞼(まぶた)の闇に
白いチョークで √ の文字を書く 

( √ はね・・・
( どんな者も排除しない 
( 全てを匿(かくま)う優しい記号なのさ・・・ 

博士の古びた引き出しに 
「 雨ニモ負ケズ 」の紙切れ一枚 
死後に発見されたという 

デクノボウになりきれぬ 
半端(はんぱ)者のデクノボウは 
休日 
真昼の湯舟で暖まり 
瞳を閉じて 
かたまっていたからだをのばす


  * この詩は一部、映画「博士の愛した数式」
   (原作 小川洋子 著作は新潮社刊)を参考に書きました。



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