真昼の入浴 〜デクノボウの休日〜/服部 剛
幸せは一杯の紅茶
飲み込めなかった昨日の苦さに
一(ひと)さじの砂糖を溶かす
幸せは真昼の入浴
日常の垢(あか)に汚れた心身(こころみ)を
泡立つタオルで浄い落とす
幸せはきっと
遠い日に破れた恋文
いつまでもこの胸に
手の届かぬ天使の美しい面影(おもかげ)
幸せはきっと
やかんの頭を沸騰(ふっとう)させた
卑小な敵をそっと自らの懐(ふところ)に入れること
彼は深夜の鏡に映る私の分身
真昼の湯舟に浸(つ)かりつつ
薄黴(うすかび)の生えた天井へ昇る湯気(ゆげ)が
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