髭を剃る夜 /服部 剛
一昨日
夕食を待ちきれず
ピーナツをひと袋
ぼりぼりたいらげたら
腹をくだした
昨日
無精髭(ぶしょうひげ)を剃(そ)り忘れたまま出勤し
一日青白い顔で吐き気をこらえつつ日が暮れるまで働いたが
堪忍袋(かんにんぶくろ)の緒が切れて勤務時間を終える前に近所の医者に診てもらい
そのままふらふらと家路について布団(ふとん)にもぐった
今日
朝一番に鳴り響いた電話のベルに起こされて
受話器を耳にあてると主任さまの雷声(かみなりごえ)
「 こらお前!
無断で帰るとは何事じゃ!
みんなで探したではないか!
お
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