モグラ/たけ いたけ
昼下がりなんてない冬
あるのはインかアウトぐらいだ
電車で窓越しに見えた
トタンの家屋の長袖のシャツの男の顔が見えない
その両脇の
なにかあるだろう
でもなにもないような
ないもない暗闇に
もぐりこみたかった
あの筋肉の膨らみは息をしていた
僕は空を見上げる
なにがある
空がある
冬の空は綺麗だ
綺麗がある
僕には飽き足らない空がある
あの雲の膨らみは生きていた
僕よりもずっと大きく生きていた
忘れていた
生きている意味なんかなかったことを
想像は歪んでいたことを
窪みはじめる
心の真ん中を抑えることができず
あらわすこともできず
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)