手は そしてまた言葉は/黒田康之
 
膚は
くるくるとした螺旋で描かれ
どこまでも果てしなかった

手のひらに神社の大きな木を握って
少年の僕は旅立つ
向こうには大きな川と広い河原があって
それはそれはどこまでも行けそうな気がした
遠くには赤白の工場の煙突を見上げる女がいて
青いワンピースはふらふらとゆれていた
街はすでに夕暮れていて
どの家の影も僕より長い

いつの間にか見えなくなった星の数を
いつの間にか見えなくなった星の数を
この科白だけで僕は数え切れるだろうか

こんな翌朝の晴れ間はいつも蛇の形に似ている

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