雨中2/ふじわら
 
彼女の目は覚めた。
彼女の目にした物は激しい雨と揚羽蝶。
よろよろと飛んでいた様だがすぐに地面に落ちた。
死んだように見えた。
蝶の死んだ場所のすぐ近くには屋根が付いた、
彼女が眠っていたベンチがあった。
そこに入って出なければ死ななかったのに。
彼女は揚羽蝶を嘲笑う。


彼女の耳に幻聴が聞こえた。
ずっと待っていたはずのその曲を
幻聴だと認めたその時。
切ない曲だった。
胸が潰されそうに苦しかった。




雨は冷たいだろう

雨は止まないだろう

雨は彼女を殺すだろう

雨は屋根から出る彼女を殺すだろう




本能の衝動はしょうがない
音を求めて飛び出した
曲を求めて飛び出した


求める事は生きる事
生きる事は壊れる事
壊れる事は恐れる事
恐れるから求めてる


彼女は雨の中で嘲笑った蝶のように倒れて死んだ。
その死体と死に様を近くで嘲笑った男が居た。
男もまた求めていたものを思い出し雨のうちに飛び出すだろう。
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