光の滲む雨の夜道を/服部 剛
雨の降る仕事帰りの夜道
傘を差して歩く僕は
年の瀬に冷たい廊下でうつ伏せたまま
亡くなっていたお爺(じい)さんの家の前を通り過ぎる
玄関に残る
表札に刻まれたお爺さんの名前
つかまって下りて来た階段の手すり
「 また来週・・・! 」と
車のドアを閉めて走り出した窓越しに見える
門の前に立つお爺さんの姿だけが
小さくなってゆく
止まったままの時間の中から
今もこちらに手を上げている
帽子のつばの下に目を細めて
降り続く雨は
街灯がアスファルトに映す
ぼんやりとした光を滲(にじ)ませる
( 僕はお爺さんに何ができ
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