菌術/三浦謙樹
きのこ狩りにゆくことにする。
森の中へは、菌糸を織込んだ焦茶のマントを纏い、菌の鳥打帽を被ってゆかねばならない。
極力、菌を偽装しないことには、茸に出会うことも儘ならぬ。
菌と菌と菌
薄暮たゆとう目のない鶇
呪文というものは、場や相手によって効能があったりなかったりすることはあたりまえにあり、環境が整っているのにも関わらず発効しないことも当然ある。忘れた頃に発効、などということさえある。
もちろん、掛ける術師の能力、見識により確立は変わってくるのだが、ともかく効くのが稀であることは間違いない。
そういったことが、呪文と胞子が似ていると認識される所以であるが、呪術遣いが『きのこ』という存在と即かず離れずの生活を送っている理由は、当人たちは決して口にはしないものの、そのことにあるであろうことは容易に想像がつくものである。
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