子宮/窪ワタル
 
自宅出産だったので
離れの二階は落ち着きます
人工構造物にも 体温があるのですね
築三十五年の子宮は
隙間風やらひび割れやら歪みやらで
大地震でもあればひとたまりもないかも知れません
(わたしはひそかにたのしみです)

終戦記念日 誕生日の早朝
わたしは生まれた部屋で
電脳水槽に向かって ひっひっふう
と  ことばを連ね
狭い世界の雲の巣の
かぼそく光る先端まで

人工構造物の子宮には
わたしの他には過去しかなく
ただ現象の降り積もる
それはまるで認知症の末期のように
乾いたわたしの母なのです


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