[ 思い出列車 ]/渕崎。
一両編成の小さなトロッコ列車が
蒸気を噴出し、電線の上を走っています
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
煤けた窓の向こうに、
小さな小さなどこか懐かしいレトロな駅と、
やはり奇天烈な格好の駅員が見え、乗客はゆっくりと口角を吊り上げました
『もう、終点です。切符の拝見はよろしいでしょうか?』
「えぇ、最後の最後におもしろい演出をありがとう」
奇天烈な色合いの駅員服に身を包んだ少女は、
そう言って帽子を取ってお辞儀する老紳士ににっこりと微笑んで
切符をはさみでぱちりと切り落とし
小さな会釈を返しました。
この、不思議な列車の名前は駅員以外の誰もしりません。
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