猿精/田代深子
がおまえたちを嫌い嘲る
絶対にそうなる
ましらは痰の からんだ喉で
こちらを見 ず猫背より丸く折れ
腕を 長くねじらせ吐き こぼす
夜よりも黒く濁る 水と一緒に
抱える桶を 鉄柵ごし投げつけた
桶に張った水 と鯉を駐車場に
打ちつけ 桶はましらの尾に当たっ
たようだ 啼! ましら 啼々と
出会ったからには
眼をそらしては
その鯉を
おまえにやろう
代わりにおまえ
うちにおいで
おまえに
羽入りの絹布団
青磁の皿をやろう
ほぐした魚を
毎日盛って
ましらの猫背は ますます丸く
長い腕と鯉を巻きこんで丸く 尾だけ
くねる 水すする音しばし膨れ萎んで
小さく丸く 濡れそぼった猫と なり
鉄柵をすり抜け来て 足にすりついて
魚はほぐさなくてよろしい
ましら猫を抱え 夜より黒い水溜まりを
蹴って 水しぶきたてて 駆け帰る
2006.2.19
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