手毬/tanu
ひぃ ふぅ みぃ よぉ
夕陽を浴びた銀杏の影が
柿色の地を這う夕暮れに
幼い私は
祖母の形見の手毬を突く
いつ むぅ なな やぁ
紫と紅と白
少しほつれた糸に
人差し指が引っ掛かる
男の子のくせに
手毬を突くのが好きだった
男の子だったから
夕暮れにしか手毬を突けなかった
誰もいない
夕暮れにしか
ここのつ とお…
そこから先は
数えられない
私が大人になっている隙に
あの日の手毬は
何処かへ消えてしまった
ばあちゃん…
もう一度手毬を突けるのは
あなたの歳になる頃かな?
それとも手毬は
二度と戻ってこないのかな?
ひぃ ふぅ
みぃ よぉ……
人気のない黄昏時
私の独り言だけが
茜の空を 流れてゆく
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