夜想(第二稿) /服部 剛
 
真夜中の部屋で独り
耳を澄ますと聞こえて来るピアノの音
沈黙の闇に 響く「雨だれ」

( ショパンの透き通った指は今夜も
( 鍵盤の上で音を紡(つむ)いでいる

写真立ての中で肩を並べる懐かしい人々が
時を超えて私に微笑む

色褪せた遠い記憶を
この胸に甦(よみがえ)らせる旋律(メロディー)は
古い日記の閉じた頁(ページ)へと流れる
小川のせせらぎ

真夜中に現れた幻影
ピアノの詩人が奏でる
言葉の無い音の水滴

心に沁み入り

閉じた瞳に涙腺は緩む 



 * 自家版詩集「明け方の碧(あお)」(01年)より  




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