ある日の夢 〜鎌倉の寺へ〜/服部 剛
 
鎌倉駅の通路の壁に
寺へと続く石段の写真が展示されていた

門の向こう側の境内には
不思議な光が満ちあふれ
そっと上げた足先を写真に入れると
体ごと吸い込まれた僕は
気が付くと
石段の下に立ち
寺の門を見上げていた

木々の葉が静かにざわめき
天気雨が降り始めた

濡れた石段を上ると
左手の木立の奥に立ち
無言でにっこり呼びかける仏像は
左手に碧(あお)く光る御霊(みたま)を乗せていた 

霧雨の淡い光の中 門をくぐる
寺の裏側に行くと
草の茂みにひっそりと
詩人の墓石が立っており
傍らに並ぶ岩に刻まれた二行の碑文

「 無数の紅いも
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