私が生まれる前に/服部 剛
ベッドで横たわる母に抱かれた傍らから覗き込む
幼い姉の歓びに躍る天使のまなざしがあった
私がこの世に生まれた日
視界では見わたせない青空から
両手に溢れるほどそそがれていた
目には見えない光
私が生まれるより前に
無数の人生の物語があり
どれほどの幸福と悲劇があったのか
私はひとすじの道を歩む
「大いなる過去」から
吹いて来る風に背中を押されながら
空から舞い降りてきた一通の手紙を懐(ふところ)に入れて
寂しさを心に宿す「もう一人の私」を
人生という夢の旅路に探して
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