アナタの夢を見た放浪者/こめ
もうすぐぼくは旅にでるよ
何にもなく
宛先も書かれていない
手紙だけを頼りに
ぼくは昔のアナタを思いだして
排気ガスにまみれたこのどぶ臭い
町を今日でる
古ぼけたでも住み慣れた
思い出のアパートにさよならといって
色々な感情が混ざり合いながら
アパートをあとにした
雪が降る夜道を
一人孤独なまま
昨日覚えたばかりの歌を
口ずさみながら
しーんとした駅へと向かった
ホームに出ても誰もいなく
最終電車までは
あと少し時間があった
売店は閉まっていたので
自動販売機で暖かいコーヒを買って
今にも壊れそうなベンチに腰を下ろし
コーヒーを飲みながら
最終電車を待った
誰もいないホームの中で
弱虫なぼくは
誰にも知られず意味不明な
涙をながしていた
アナウンスが入り
最終電車が来たので
残りのコーヒーを一気に飲み干し
アナタを夢見て
がたがたなる電車に身を任せ
ぼくは放浪の旅に出た
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