あいうえお作文(上)/田中眞人
 
った
 背中を向けたまま 拗ねているのはもう止めて
 そういう意味で言ったんじゃ無いんだ、ごめん

    流石のおれでも、偶には折れるのだ、ということ

たノ行
 
 楽しい時間は
 ちょうど 瞬きをする位に 直ぐ過ぎてしまう
 詰まらない時間は
 てんで 遅く流れるのだ
 ところで おまえは今 何をしているの?

    ため息ばかりついても何も変わらない、とは、思う

なノ行
 
 何か不満が有るらしく 
 にべもなく言った、おれの傍に居ることは つまり
 微温湯みたいに 浸かっていると温かいが 出ると寒い らしい
 ね、上手いでしょ、と
 飲み込んだ感情を おれは どう表せば良いのか 判らなかった

    何がいけなかったのか、まだ気付いていなかったんだ、悲しいことに

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