病院/時雨
熟れたリンゴを一口パクリと、甘い味にしばし酔いしれる。
相も変わらず君は一人で、窓の外だけ眺めてる。
病院では静かにと、看護婦さんは僕に言ったけど、
意外と騒々しい人々の声を聞きながら、僕は目を閉じる。
ナースコールに救急車、時折聞こえる人の悲鳴は気のせいで有って欲しいと願いつつ
痩せた君を再度視界に入れるため、僕は目を開ける。
相も変わらず君は一人で、窓の外だけ眺めてる。
元気になってねと、君の友達は言ったから、
その言葉に君は笑ったけれど、
元気になれるものならなってると唇を噛んだのは僕だけじゃない、と。
言える言葉はすべて言い尽くしたから、あえて僕は黙っています。
願わくば、こっちを見て欲しいとは思うのだけど。
戻る 編 削 Point(2)