季節のさなぎ/半知半能
 
短い冬が終わりを告げる頃
街並みの全てが水平となり
凍り損ねた思い出たちが
空気の底に溜まります
両手を器としてそれらをすくい
私の体温を少々与えてから飲み干すと
薄氷色の街並みが
私の内面と数呼吸で入れ替わり
さわ と
さわ  と
私の内にたおやかに糸を張って
季節のさなぎとなります
そうして 短い冬は季節の合間の空白を伴い
優しくなり
春の香りを私の頬に宿すのです


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