ゆき/服部聖一
 
「ゆき」が「ゆき」の上に降りつもる
「ことば」上に「ことば」が降りつもるように
たとえば「発語」ということばに「発語の共有」ということばが降りつもるように
白の上に 白が降りつもり
どこまでの白が今日のゆきで 昨日のゆきはどこまでなのか
その境をあいまいにしてしまう
「ゆき」はひとの名前のようでもあり
現代の「ことば」の上にも「ゆき」は降りつもり
その向かう先は 天上なのか地下なのか 空なのか海なのか 
オリジナルなのかコピーなのか
私のゆきとあなたのゆきは ほんとうは微妙にちがうのか

考える間もなく手のひらの上で「ゆき」は溶け 水になり水になり
透明な「ことば」の羅列を生み 
降りつもり降りつもり
悲しみの上にも 愛情の上にも 憎しみの上にも 降りつもり
書きたされ 上書きされ それでも白く白く
今日のゆきの上に 今日のことばのように降りつもる
「ことば」の上に「ことば」が降りつもり
あなたと私の ことばのりんかくが あいまいになる
白く 白く
「ゆき」が「ゆき」の上に降りつもる
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