そらにひびくこえ/服部 剛
穏(おだや)かな初春の陽射しを額(ひたい)にあびて
目を細め のんびりと自転車をこいでいた
狭い歩道の向こうから
杖をついたお爺(じい)さんがびっこをひいて
ゆっくり ゆっくり 近づいて来る
( お爺さんと僕がすれ違う時 )
網目のフェンス越しに
ラケットを手にした白い服の青年の軽い足どり
黄色い球をはじき返しては
「 ファイトー・・・! 」
と青い空へかけ声を響かせる
歩道の上で自転車をこぐ僕の
背負っていた日頃の悩みが
幻と消えた ひととき
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