ある美しい愛の固定観念について/「智恵子抄」をとにかく読む(1)/渡邉建志
 
と言うわけです。独り者としては許しがたいです。




「おそれ」

好きです。

いけない、いけない
静かにしてゐる此の水に手を触れてはいけない
まして石を投げ込んではいけない
一滴の水の微顫(びせん)も
無益な千万の波動をつひやすのだ
水の静けさを貴んで
静寂の価(あたひ)を量らなければいけない

この聯だけで「いけない」が5回使われているのに気付かれたでしょうか。そしてそれがちっとも稚拙ではないことを。一つの音楽を作り出していることを。
さて「静かにしてゐる」「水」とは何のことでしょうか?
{引用=
あなたは其のさきを私に話してはいけない
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