牡丹雪/日和
 
を駆使して

冬のつめたい空気のなかで
君はその頬を染めて やさしく肩をふるわす
フィラメントのような髪が揺れる
ほぅ ほぅ と
吐き出し方さえやさしい
君を取り巻く空気が すべて泣いているかのようだ
「そんな君が僕はすきだ」

牡丹雪が睫毛に積もっていく
牡丹雪が睫毛に積もっていく

牡丹雪は言い訳
やさしい君が とりわけやさしく見えるから
君を迎える前の 一瞬の出来事
君に気付かれる前の 一瞬の君の呼吸が見たくて

駆け出さない
私の拙(つたな)い吐息の向こうで やさしい君が待っているから
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