キャラメルと価値と詩について/馬場 こういち
 
ある日、大学の売店で飲みものを買いました。
三十九ルーブルだったので、十ルーブル札を四枚だしました。
売店のおねえさんはお釣りの一ルーブル硬貨(日本円で四円くらいでしょうか)を探しましたが、ありませんでした。
そこで彼女は奥の棚からキャラメルを一個とりだして、私の掌に置くと、にっこり微笑みました。

暖かい寮の部屋にもどるまでの間に、この一ルーブルの代わりに貰ったキャラメルを口にほうり込み、いろいろなことを考えていました。

「もし私が、甘いものが大嫌いな人だったら?」
「キャラメルにまつわるトラウマを持っていたとしたら?」
「飴やキャラメルでお釣りを支払う、
 これはロシアの
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