みどりのコートを着たコドモ/mina
 
他人の耳をとおしてバクバクと鳴り響いている

  なんにもない

  がっかり というより ほっとして
  おかあさんたちにいないことみつからないうちに帰ろう
  と もういちど月を見上げた

  鉄骨が幾本にも増え
  いつも遊ぶタコ滑り台みたいになっていた

  銀の魚がキラキラと滑り落ちてくる
  たくさん
  あとから あとから
  でこぼこの土に 入っていく

  暗闇に消える瞬間
  ぱちん
  跳ねるような音


  すると ぼくのてのひらから小さななにかがでている
  熱い 空気の層のまんなかに なにかある


  ぼくは そっと それを銀魚が消えた土の穴へと置いた
  きがつくと ぼくは みどりのコートを着て
  新しい命が芽吹き出す原っぱに立っていた
  
  
戻る   Point(9)