十五分の手紙/松本 涼
運河の方へと枝を伸ばす木の下に居ます
十五分の休憩時間に会社を抜け出して
頭の中で君に手紙を書いています
目の前には誰も乗っていない船が少しだけ揺らいでいます
今日はとても風が強くてそのせいで
僕は昼間から少し哀しいのかもしれません
今頃君は遠く遠くでせっせせっせと働いているのでしょうか
同じ空の下にいるなんて言葉には何の力もありません
今僕は君の手を想像しています
けれどそれはまるで違う誰かの手なのかもしれません
なぜなら手どころか頭の形だって背の高さだってよく思い出せないのです
そういえば君が僕の手に興味を持たなかったことはちょっと残念でした
僕
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