門出/服部 剛
た
( その背後には
( 僕が生まれる前に亡くなった祖父が
( うっすらと仏の顔で目を細め
するり
腕はタイルから抜けて
知らぬ間に落としていた
お湯が出たままのシャワーを拾い
頭に泡立っていたシャンプーを
昨日の重い悩みと一緒に洗い流す
久しぶりに畳の部屋の仏壇の前に立つ
マッチでお線香に火を灯(とも)す
白黒の祖父の遺影をみつめる
鐘を鳴らす
手を合わせる
( 暗闇に 炎の獅子(しし) 舞い始める
いつもと変わらない玄関のドアを開け
昇る朝日を少し見上げ
門を出て行く
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