黄色い花/服部 剛
 
旅人よ
君は何処へゆくのか

その靴がすり切れるほどに
過ぎ去った悲しみの日々は背後に遠のき
名もない無人の映画館のスクリーンに
モノクロームの情景は映し出される



「ひとりのけなげな少女は道の片隅に座り
 柔(やわ)い手のひらに寝かせた 一輪の花
 たったひとり館内の客席に座る君に差し出す

 スクリーンの中から君へと伸びる少女の白い腕

 一輪の花が手わたされる時
 モノクロームの花びらに
 明るい黄色が浮かび上がり
 淡い薫(かお)りに君は そっと瞳を閉じる         」 



旅人よ
君は何処までもゆくだろう

空白の旅路を

消えることのない
一輪の黄色い花を
胸に潜(ひそ)めて




  * 平成18年・元旦
   岡部淳太郎さんからの年賀状に書かれた
   詩「出発」への返詩として。 




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