石ころ/服部 剛
 
の部屋で
九十過ぎの尼さんは
ベッドに横たわっているという

病に倒れる前 
受話器越しに聞いた 
尼さんの嗄れ声 


( あなたのことをいつも祈っています )


白い壁の窓の中に思いを馳せて
芝生に伸びる私の影はうつむく
足元に置いた鞄(かばん)から取り出した
ノートとペンを手にしたまま

見下ろすと
黒影の胸に隠れた
ひとつの
石ころ 




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