石ころ/服部 剛
 
あても無く彷徨(さまよ)う
芝生に伸びる私の黒影
丘の上に独り立つ

只(ただ)
北風は枯草(かれくさ)を揺らし
雲ひとつない空は澄みわたり
日の光の道を映す海は
凪(な)いで

水平線の彼方(かなた)にはうっすらと
島が見える

果たせなかったいくつもの約束を
あそこに置いてきた気がする

眼下に広がる霊園
墓石に柄杓(ひしゃく)で水をかける婦人
夫は石段に屯(たむろ)す子猫に餌(えさ)を蒔(ま)いている

海沿いを走る線路の踏切が鳴り
江ノ電がゆっくり駅に近づいて来る

丘の下にある修道院の部
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