特効薬/cyuma
説明書の後ろには
｢困った時には｣
というページがあります
マニュアル通りに「困れる」ことが
私たちにはいくつあるのでしょうか
それで解決してしまう
ほんのわずかな問題は
きっと理解が足りないだけです
本当に困った時は
胸の奥が膨張して
そこに大きなものが詰まってしまいます
ケーキもおいしくありません
人の笑顔が薄っぺらく感じられます
好きな曲も雑音です
世界は少し曇って寒さが増すようです
説明書にはかかれていない
そんな時の特効薬
小さな頃は父や母でした
そして大きくなるにつれ
自分によく効く他人を探し始めました
いつか
一番顕著なそれを見つけた時
ごくんと唾を飲みこみ
私の世界と私の名字が
厳かに静かに変わっていそうです
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