White Tree/服部 剛
駐輪場に停めた自転車の
前輪に取り付けられた鍵の穴に
鈍い銀色の鍵を差し込み
両手でハンドルを持ち
2台のスクーターの間をぶつからぬよう
抜け出るよう そっと 引く
片方のペダルがスクーターに少し擦(こす)れた
間を抜けようとする時
お互いは少しずつ傷付くもの
( 時が流れれば
( たいていの傷口は知らぬ間にかさぶたが覆っていた
( いつか 深い心の傷口さえ光は滲(にじ)み・・・
誰かと交わした言葉がすれ違い
胸の痛んだ場面を遥かな背後に遠ざけるように
自転車のペダルは澱(よど)んだ心を振り切って回り続ける
マフラーを冬の冷たい夜風にたなびかせ
我家(わがや)へと続く夜道の先に
七色の小さい灯が瞬くホワイトツリー
遠い闇に浮かぶ 朧(おぼろ)な光
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