渋谷レッド・ノゥズ・レインダー/蒸発王
 
細かい雪が


と降る

夜更け


人の居なくなった渋谷駅で
仕事帰りの
主人を待っていると
同じく
主人を待ち続ける
あの有名な犬が話しかけてきた


世間話から始まり
最後にお互いの主人の話に落ち着いた
愚痴がいつのまにか
自慢に変わっていて
私も犬も少し笑った



しかし人間も罪なことをする
君は死によって
やっと待つことから開放されたのに
こうして銅像を作ってしまうなんて
これで君はまた主人を待たなくてはいけないじゃないか

と言うと


犬は
銅の口をゆるゆると動かし


これが良いのだ


と笑った
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