「空白乗車券」/服部 剛
 
仕事帰りの人々がため息まじりにぞろぞろと
スクランブル交差点をわたり渋谷駅へと吸い込まれてゆく

18時20分

パチンコ玉なった僕は
ジグザグに人と人の間を縫(ぬ)ってゆく

安いぺらぺらのジャンパーを着た
ハーフらしき茶色い瞳の小さい男の子は
鼻水のたれる穴をふさいだティッシュをつめこんだまま
シャドウボクシングを繰り返し
避(よ)けてよたつく僕の腰をかすめていった

後ろから姉らしきブロンド髪の女の子が
元気ハツラツ「オロナミンC」のビンを片手に小走りで
雑踏に消えゆく弟の背中を追いかけていった

駅の入口に吸い込まれ落ちてゆく
無数のパチン
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