背骨/松本 涼
 
なだらかな夜の背骨の上を
滑るようにして僕は歩く


温度を持たない
曲がり角を曲がり

名前を寄せない
ガードをくぐる


透明感を隠した街に焦がれる
僕を覆う他人の溜息
ピアノの低音に歌う野良猫


道端に落ちているもの
道端に落とすもの
免れない同じ褪色


失くしたはずの鍵で開くドアの前で
僕の背骨はまだ詩いたがる


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