ことば と/竹節一二三
 
くらやみのなか
腕をいっぱいにのばしたら
なにかに触れた
それはきっと
ふるい記憶

よどんだ海に
しずむ夜
咳きこめば
のどのおくから
ぷるんとした ことば が
こぼれおちる

ひんやりとした手すりに
もたれて
日ごと
目減りするやさしさを
ながめている

 ことば は
魔法のように
わたしを決める

ふわりと
ゆるりと
かたちなくいたいのに
 ことば が
わたしのありようを決める

つきも沈みゆく夜に
わたしの ことば は霧になる
ひろく冷たいかぜにとけ
明日のわたしの行方を決める
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