カステラ/松本 涼
 
ある冬の日の午後に
人通りの少ない道を選んで
散歩をした

それは確か 手が
かじかむほど寒い日だった


一時間ほど歩いて
そろそろ家に戻ろうとした時

前方にある電線に
何かがぶら下がっているのが見えた

近づいて見上げてみると
それは君の歌だった


君の歌は端の方が電線に絡んで
タランとぶら下がっていた

少し飛べば届きそうな高さに見えたので
僕はその場でジャンプしてみた

けれど思ったよりもそれは高く
何度ジャンプしても
あと10センチほど足りなかった


諦めて帰ろうかとも思ったけれど
何故
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