故郷へ帰る/初代ドリンク嬢
故郷へ帰る
山の腹の中へ入っていくように
いくつものトンネルを抜けて
向こうに見える山の
まだ
向こうへ
そこで
私は生まれた
山に沈む夕日を見る
小さな川の土手に咲くサクラの下を自転車で走る
両脇ともお寺に挟まれた道を歩く
こうじの匂いいっぱいの味噌屋の幼馴なじみの家
友達と駆けてきて沸いてくる地下水を手ですくう
遺跡でのラジオ体操
塾帰りに見上げる落ちてきそうな星星
祖母は山のふもとに住んでいた
囲炉裏があった
2階へははしごのような階段を使った
トイレは外にあった
年末には親戚がそろって餅つきをした
大きな柿の木の下だ
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