禮體/遊羽
 
  静かなる心の内の
  乱れ始める波立てゝ
  具象の宙 落ちる雫の色
  手垢のよくついた鈍い色彩
  かき立たされた沈黙の縁に
  芽生えの音にさえ敏感な
  今はひと休みに向かいつゝある
  水面 まだ静か
  心の内の幻覚ひとつ
  はがれて落ちるように
  色彩を落とす
  落ちてなお 探し回る
  いにしえの禮
  美徳とはすでに呼べない
  故に震え それ自身を
  昨日の壺へと急がせる
  理想が夢があこがれが
  それ以前の回廊へと立ち上がり
  それさえもまた
  かき乱されては萎みゆく



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