ゆびきり/蒸発王
いだ
女の子は
ゆっくりと
でも
確かに
少しずつ大きくなって
私と同じくらいの年になった
彼女は私に笑いかけると
私の『一本』しか小指の無い右手を手にとって
ゆびきりをした
−連れていって 約束−
小声で囁かれたその声は
聞き覚えがあって
目を閉じているその顔は
見覚えがあって
は、と
彼女の顔が母に似ているのに気付いた時
母の声で目が覚めた
血で汚れたシーツに心配し怒る母に
理由と夢の話をすると
ものすごく驚いてから
ものすごく哀しそうに
私に
姉がいたことを話した
私達は双子で
お腹の中で片方は羊水に溶けてしまったそうだ
ああ
だから
−連れていって−
せめて
小指だけでも
私に託したのか
『お姉ちゃん』
小指を見て
小さく唱えた
(−ゆびきり げんまん−)
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