宇宙ノ声/服部 剛
公園へと続く夜道の街灯に照らされて
百日紅(さるすべり)の木は裸で独り立っていた
枝々に咲かせた無数の桃色の花びらを
過ぎ去った夏に葬(ほうむ)り
樹皮を磨く北風に じっと口を結んで
毛糸のほつれた古いマフラーを巻いて
寂しげに歩く青年が、立ち止まる
百日紅の滑(なめ)らかな肌を
根元から幹へと指先でなぞり
すべらせる視線を、宇宙へ放つ
無数に枝分かれして
伸びゆく小枝が指さす星空に響きわたる
遠い密かな鈴の音(ね)
優しさは
億光年の彼方(かなた)に
今夜も瞬(またた)き
遥かなる過去から、光を送る
人知れず北風に震えながら
地上に影を落として並ぶ
百日紅と青年に
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