とり返しのつかないもの/炭本 樹宏
 

 まだ、家の近くの野原にすすきが生えていたころ

 どろまんじゅうを作って

 友達とどちらが固いものができるか競っていた

 一日はあっという間に過ぎ

 暖かな夕飯を母が作ってくれて

 待っていてくれていた

 今はコンクリートの箱の中で

 金魚のように酸欠になりながら
 
 口をパクパクさせている

 強さの変わりに失ったもの

 とり返しのつかないことを

 してしまったのかもしれない



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