夢の小部屋 〜もの忘れのお婆ちゃん達と共に〜/服部 剛
 
=のうり}のスクリーンに映し出されるのは
幼い頃に母さんにおぶられて見た
あの いつかの 夕焼け空

僕の名前を覚えられなくても
八十年以上それぞれの物語を演じてきた
人生という舞台の外に
散らばった無数の記憶と場面の全てが
いつか吸い込まれてゆく空白の世界に
小さい輪をつくった皆で笑って過ごした今日の日の絵が一枚
金色の額縁に入って浮かんでいればいい

僕は明日も
開いた扉の向こうに並ぶ
お婆ちゃん達の笑顔を探して
大きいボールを片手に
夢の小部屋に行く









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