ノート(春の蛇)/木立 悟
 

父も母も知らない
ある日気付いたらひとりだったから


蛇はつぶやく
死ぬときはここに
この原にもどってくる気がする
少女はつぶやく
そのときは私も
そばにいるような気がする


蛇はうたう
雨がくる!
少女はうたう
雨はこない!


交わされる笑みと舞
季節の合い間の
まばたきの永遠
その日 風は見つめていた
ひとりの世界が生んだ子を
花と葉と鱗の魂の子を
くりかえし蛇と出会う子を
見つめていた




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