人間/純太
 
ある乳飲み子は
愛ある母の乳を飲み
栄養の意味を知らずとも
子供に育ちゆきゆきて

ある男子は乳を忘れ
愛撫ゆえに乳首を吸い
重ねる日々に乳房を選び
ある日衰えを知ってゆく

ある女子は
恋心の実を得てるのに
嘘の涙をわかってもらえず
その悔しさで
本当の涙を流し
華の命の儚さを知りゆきて

ある乳飲み子は
良薬の価値を知らずに
にがさで吐きだす
されど親の慈愛と智慧にて服用し
飲んだ薬を薬と知るよしもなく
元気な瞳を取り戻す

ある大人は
良薬の価値を知るくせに
欲を昇華させて
滅せない我が身の哲学を
美学にするゆえ
生命力を侮り
薬を
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