シャボン玉/松本 卓也
冷め切った路地に
泡沫の玩具が舞って
寒さ堪えて歩く僕の
肩に弾けて消えていった
子供達の無邪気さと
自分の卑しさとを比べ
小さく息を吐いて
無造作に首を振る
涙が出た訳じゃなく
冷たい陽光に映えた
シャボンに奪われた視界
日常の欠落を埋めたようで
立ち止まり振り返る
笑い声 遠くに響き
そよ風 無垢を運んで
映えた空 吸い込まれ
あの風景に一瞬でも
僕は居れたのだろうか
駆られた衝動を苦笑で抑え
浮いた造型を思い浮かべ
ふと風に舞う泡沫が一つ
目の前をゆらりと横切った
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